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女優・北川景子さん「仕事に欲深かった私が、人間らしい生活を送ってます」

出産してから1年8カ月。その美しさと輝きは滞ることがなく誰もが認める絶世の美女のまま。研ぎ澄まされた美しさに柔らかな母性を兼ね備え、無敵の存在感に圧倒されます。なのに気さくで面白く、自分を飾らない誠実さも魅力的。美ST初登場の今回、仕事に対する意識の高さと家庭を大切にする姿勢を語ってくれた北川景子さん。女優の表現力と気品溢れる世界観は必見&必読です。

期待にいつでも応えられるよう強い意志と自己管理でブラッシュアップする努力の女性

《Profile》
’86年兵庫県出身。’03年雑誌「SEVENTEEN」専属モデルをきっかけに芸能界入りし、ドラマ「美少女戦士セーラームーン」で女優デビュー。以降ドラマ「HERO」「家売るオンナ」「リコカツ」、映画『ファーストラヴ』『スマホを落としただけなのに』など話題作で主演を務め、映画『大河への道』が5/20、声優を務める劇場版アニメ『それいけ!アンパンマン ドロリンとバケ〜るカーニバル』が6/24から公開中。

ブラウス¥75,900、ピアス¥42,900、ブローチ¥36,300(すべてPatou/IZA)

30過ぎてからは首にアイクリームを、産後は毎晩30分競歩で体型を戻しました

今夏で36歳になるのですが、30歳になった時、20代との違いをガンと感じました。食べすぎると太るし、食べないとガリガリになって、いつも綺麗ではいられなくなった、と感じて。実は私は父親似。特に鼻と輪郭はそっくりで、父はキリッとした顔立ちですが、私は男顔だとずっと思っていました。

肌は敏感で、美容効果が高すぎるものはブツブツが出てしまうためシンプル派。洗顔後、ONE BY KOSÉ セラム ヴェールから化粧水を丹念につけて乳液を。冬はクリームに切り替えて、すべて首まで塗ります。さらに、首にはアイクリームを塗ってケア。

メークは仕事以外はほぼしませんが、写真をSNSに載せることになりそうな友達とのお食事や、集合写真を撮るのがお決まりのセーラームーン共演者5人での集まりは、ちゃんとお化粧します。それ以外は冠婚葬祭ぐらいかな。とはいえ、ベースはスキンケアの後、目の下・小鼻・トラブルがある箇所のみコンシーラーを塗って上からお粉をのせるだけで終了。外を歩く場合は、BBクリームか色つきUVにお粉。

一番のこだわりは眉で、パレットのパウダーで全体を、目尻をペンシルで描いたら、スクリューブラシで毛流れを上げ、ヘアースプレーで固めます。肌に悪そうですが(笑)、眉毛が決まると私っぽいし、ほかのメークをちゃんとしていなくても顔の印象がはっきりするので、この3段階は欠かしません。アイシャドウはベージュやブラウンでグラデーションにし、ビューラーをするとビックリ目になるので焦げ茶のリキッドアイライナーで粘膜を丁寧に埋めます。マスカラは下まで塗ると怖い印象になるので上まつ毛のみ。チークはピンク系で、口紅は色つきリップ程度が好きですね。

このようなルールは、そもそも10代の時にお世話になった雑誌「セブンティーン」のモデルが原点。肌の質感、ヘアの見せ方、メークの仕上がりなど、先輩モデルやメークさんを見て勉強しました。自分の全部が売り物という感覚はこの時叩きこまれ、太るとか肌荒れするとか1ミリも考えたことないし、眉毛を変えるのも、爪を切るのも編集の方に確認。よく「枝毛があるからトリートメントしてね」などと優しい口調ながらキチッと指摘され、確かにそういうプロ意識って大事だなと実感。以来、たとえ休日でも髪の毛を乾かさずに寝たことは1度もないし、熱があってもシャンプーは必須。ワックスをつけたまま寝るのは体調不良より恐怖なんです。強い意志で自己管理は徹底してきました。

仕事さえできれば、と無欲に進んできた。プライベートが充実した今、人間らしい生活をしています(笑)

娘が1歳半を過ぎました。産後1年は鏡を見ると見たことない疲れた顔をしていましたが、子供が長く寝るようになると、睡眠不足が解消され出産前の肌と体調にやっと戻りました。人間、睡眠不足が一番良くないと実感。出産で体重が結構増え、ドラマ「リコカツ」の撮影が産後半年後に決まっており、2カ月間は緩く、3カ月目からストイックにダイエット。一番きつかったのはお菓子をやめたこと。甘いもの好きでコーヒーや紅茶に入れていたお砂糖をやめ、肉・魚・野菜をバランスよく食べるように。ジムでの筋トレと毎日30分の競歩を絶対すると決め、子供が寝てから夫に頼んで夜中に歩くことも。寝なくても歩かなきゃという強迫観念で、クランクイン時に体型はほぼ戻りました。

今思うと、降板も考えられたのですが、子育ても撮影も映画の宣伝も責任感を持ち、誰にも迷惑をかけずに絶対やれると自分を過信していました。そう言いながらも本心は、早く復帰しないと戻る席がなくならないかと恐怖もあって。どんなお仕事でもそう感じる人は多いと思いますが、やってみたら本当にきつくて、私のような働き方をマネしてほしくないですね。

出産と育児がどんなに大変か子供が生まれて初めてわかり、今までと同じようにやるのは無理だと実感。今も両立を目指していますが、ドラマや映画を年5~6本こなす働き方はできないし、無理せず、頑張りすぎない自分を受け入れるようになり、人間らしい生活を送っています。

仕事はいただくたびに夫と調整。親に泊まりがけで手伝ってもらうのは違うし、夫か私が家にいることが前提。夫が多忙な時は私は作品を入れないし、私が作品に入ると夫は単発的なバラエティは断ってくれます。家事も掃除・洗濯・後片付けはできる方がやります。共働きだからお互い様。

唯一料理は100%私で毎日します。子供が20時半に寝ると、21時から2日程度の常備菜を何品か作ります。料理は好きで、明日何を食べさせよう、と考えながら作るのが楽しくてストレス解消になっています。24時には寝ると決めていて、料理が23時に終われば、1時間、録画したドラマやNetflixを観ます。22時に終われば、夫婦で映画を観ることも。最近夫が「料理を勉強したい」と言い出して。そうなったらもっとラクになるかな(笑)。

誰にだって辛い時はある。でも、無理にでも奮い立たせているうちに前向きになれるんです

デビューのきっかけはスカウトでした。子供の頃は精神科医など人の心に寄り添う仕事に興味があったけれど、何の取り柄があるのかわからないまま大人になり、スカウトされた時は、なぜか「やる!」と確信。野心の塊で上京し、「絶対この仕事を途切れさせない」と熱く思ってから、夢も人生も変わりました。でも女優として仕事が増えるまでは時間がかかり、休みになると不安で、マネージャーに「空けずに仕事入れてください」と言い続け、病的なほどの仕事人間でした。

逆にプライベートは無欲。でも一生懸命に仕事をしたことは、振り返ると私自身が成長させてもらっていて、結果、女優としてやりたいことをやり、プライベートにも繫がって、結婚も出産も人間関係にも恵まれました。仕事は欲深かったけど、プライベートは無欲だったのが良かったのかな(笑)。友達も少ないし、洋服も家具もお気に入りが少しあればいいけど、気づけばものすごく強運です。

私は思い込みが強く、周囲は大変だと思いますが、常に周りに恵まれて理解してもらってきました。だから、言いたいことを良くも悪くも我慢せず、正直でいようと思います。こう言えば嫌われるかも、と思うこともあるけれど、妥協して「この人よくわからない」と思われるよりは、きちんと伝え、心を開くように。私はそれほどポジティブでもなく、細かく考えすぎたり神経質な面もある方。メンタルが落ちていたり、なぜか1年間体調が悪いとか、人生で辛い時期だっていっぱいありました。でも仕事があると、家から出たくなかったり笑いたくない時でも、嫌でも人前に出て笑い、無理やり自分を奮い立たせるうちに前向きになれる。心も豊かになりました。

いい時も悪い時も表に出なければいけない辛さはあるけれど、そのおかげで生きています。だから仕事が好き。なかったら何もなくなってしまうと思うくらいだし、ずっと続けたい。ファンの方に何かを届けたくて演じていますが、結局私が励まされ、元気をもらい、皆さんのおかげで立たせてもらっていると実感する瞬間が多い仕事です。事務所に入った時、先輩の松雪泰子さんが今の私くらいの年齢で、痺れるくらいカッコよかったんです。その年齢に自分がなり、全然近づけてないけれど、あんなふうに年を取りたい。松雪さんのように40代では舞台に挑戦したいな。年齢を重ねることはメンタル的にプラスが多いと思うし、気持ちも体ももう40代になっている気分だけど(笑)。

今は40代になると見た目よりも内臓がどうなっているか心配。前夜の食事がダイレクトに影響して、朝起きたらむかむかしたり、今でも代謝が落ちたと感じますが、その度に対処法を見つけて自分と向き合いたいと思います。今は家族3人で丸1日出かける時間がとても幸せですね。

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2022年『美ST』7月号掲載
撮影/曽根将樹(PEACE MONKEY) ヘア・メーク/山口久勝(アルール) スタイリスト/林 峻之 取材/安田真里 編集/漢那美由紀

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